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Kansas, LeftovertureのUSオリジナル その2 [アナログ・コレクターの覚書]

さて、カンサス(Kansas)“Leftoverture”についての続編である。

まずは、初盤鑑定に関する話だ。

オリジナルのレコード番号がPZ 34224であることは前回書いたが、初盤鑑定にとって重要なことがもう一つある。
実は、オリジナルのほう(つまり、80年代の再発ではなく、レコード番号がJZ 34224にかわるより前のもの)のPZ 34224の盤でも、ジャケットが二種類あるのだ。


20190707-1.jpg


手持ちの4枚(すべてPZ 34224)を並べた写真を見ると、手前の二枚が少し緑っぽく、奥の二枚は青が強く出ているが、この点は地域差か個体差かはっきりしない。
手前の二枚は東海岸のコロンビア・ピットマン工場産(一枚はテレホート工場産の可能性があるが、その点は後で説明する)で、奥の二枚は西海岸のコロンビア・サンタマリア工場産なので、地域差の可能性もあるからだ。

でも、いずれにせよ、この微妙な色味の違いはあまり重要ではない。
重要なのは表面の加工の違いである。
完全な艶消しのもの(ただしテクスチャーではない)と艶有りのもの(ただしニス塗りほど光沢はない)が存在するのだ。


20190707-2.jpg
(同じ光をどう反射するかで違いがわかるだろうか。向かって右側がWLPのジャケットで艶消し。左側がレイトの艶有りジャケット。)


比べてみると、ジャケット・デザインとあいまって、完全な艶消しがオリジナルだという思いが強くなるが、WLPがこの艶消しジャケットだったということにくわえて、艶有りのほうがレイトだという根拠がもう一つある。

PZプリフィクスのときには背表紙下端にあったX698という価格表記が、JZプリフィクスになると消えるのだが、この艶有りジャケットは、PZプリフィクスではありつつも、X698が消えているのだ。


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(上が艶有りジャケットで、下が艶無しジャケット。背表紙上端には、いずれもPZ 34224とある。)


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(上が艶有りジャケットで、下が艶無しジャケット。艶有りの方の背表紙下端にはX698がなくなっている。)


つまり、JZプリフィクスへの移行直前のジャケットだと考えられるのである。

また、この艶有りジャケットに入っていた盤はサンタマリア工場産だったが、Matrix末尾自体は、同じサンタマリア工場産の艶消しジャケットに入っていた盤と同じく1E/1Dだったものの、12時方向に確認できるスタンパーを表すと思われる記号が、E2/F2と進んでいた(艶消しのほうはA6/B2)。
これもまた、艶有りジャケットがレイトであることを示す情況証拠である。


ジャケットの話はこのぐらいにして、工場違いの話に移ろう。

ボクが持っている4枚のうち、2枚が西海岸のコロンビア・サンタマリア工場産(ともにMatrix末尾1E/1D)ということと、WLPが東海岸のコロンビア・ピットマン工場産(Matrix末尾は1B/1A)というのははっきりしている。
しかし、もう一枚は、はっきりしない。

というのも、Side1のMatrix末尾は1Cで中部のコロンビア・テレホート工場産を示すT1の手書きがあり、Side2のMatrix末尾は1Bでピットマン工場産を示すP刻印があるのだ。

これはおそらく、ピットマンでスタンパー不足が生じたためにテレホートから送られたスタンパーが使われたか、逆に、テレホートでスタンパー不足が生じたためにピットマンから送られたスタンパーが使われたかのいずれかだろう。

いずれであるかを断定できる根拠はないのだが、レコードの売れ行きが想定外だったために生じた事態だとすると、量産の必要性は中部より東海岸のほうが大きかったと思われ、スタンパー不足が生じたのはピットマンの方だったんじゃないかと思うのだがどうだろう?

ちなみに、RIAAのWEBサイトで確認すると、”Leftoverture”は最終的に400万枚を売り上げているが、1976年10月リリース後、1977年1月にゴールドディスク、同年3月にプラチナディスクを獲得している。
かなり急激なヒットだが、前作”Mask”は1977年12月にようやくゴールドディスクで、これは”Leftoverture”のヒットによって過去作も売れた結果だろうから、この“Leftoverture”のヒットは、まったく想定外のものだったと思われる。


まぁ、どの工場産であっても、このレコードはSTERLINGのジョージ・マリノ(George Marino)によってマスタリングされているので、STERLING刻印さえあれば、一定水準以上の良い音で聴ける。


20190707-5.jpg
(ジョージ・マリノのマスタリングであることは、インナースリーブに明記されている。)


で、もちろん、この時期のコロンビア系ならピットマンがオリジナル工場だろう。

しかし、コロンビア系の場合、工場によって違うラッカーが送られる。
このレコードだと、Discogsで確認できる限りで、ピットマンであればMatrix末尾1B/1Aと1B、テレホートなら1C/1C、サンタマリアなら1E/1Dのラッカーが送られた。

これらのラッカーは、おそらくジョージ・マリノによってまとめて切られたものだと思われるが、音はかなり違っている。
目で見てもはっきりわかるのは、Side2の1A(あるいは1D)と1Bの違いで、送り溝の幅が前者では11ミリ強あるが、後者では8ミリ弱しかない。


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(1Aの送り溝。11ミリ強ある。)


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(1Bの送り溝。8ミリ弱しかない。)


送り溝が3ミリ以上違うということは、カッティングがそこそこ違っているということで、当然、音も違うはずだ。
まとめて複数のラッカーが切られる場合、多少の音の差があっても許容範囲ならオッケーということだったんじゃないかと思う。

1C/1B盤もボクの推測通りピットマン工場産だとすると、Side2の1Aと1Bの音の違いは、工場による違いはないことになるので、純粋にカッティングによる違いということになる。
で、確かに、工場による音の違いとは傾向の異なる音の違いだと思う。

つまり、コロンビア系の場合、工場違いの音の差にくわえ、カッティング違いの音の差もかなり大きい場合があり、どこの工場の盤が一番好みの音で鳴るかは、レコードによってケースバイケースで判断するしかないんじゃないかと思うのである。

で、この”Leftoverture”はどうだったかというと、確かに、鮮度の高い音が切れ良く飛び出してくるという点ではピットマン工場産のWLPに軍配が上がるのだが、ボクの好みからすると、低域が少々タイトすぎる。

高域と低域のバランスや横の広がりまで加味した全体的な印象では、”Carry On Wayward Son”から始まる Side 1では、横の広がりと低域の重さのバランスが素晴らしいサンタマリア工場産の1Eが捨てがたい。

Side 2では、低域の重さとほどよくタイトな鳴りが実に心地良いピットマン工場産の1B(プレスはテレホートの可能性もないわけではない)も魅力的だ。

こうした音の印象は、工場違いによるところもあるだろうが、カッティング違いに由来するところも大きい気がするのである。


さて、最後に、いまだ解けない謎を一つ(笑)


20190707-8.jpg


WLPに貼ってあったこのシール、WCASというのはラジオ局の名称だろうが、8/76というのはやっぱり76年8月ってことなんだろうか?

“Leftoverture”のリリースは、76年10月21日ということになっている。
ってことは、このWLP、2か月も前にラジオ局の手に渡ってたってこと?

そりゃまぁ、確かに、こういうWLPは、リリースに先駆けて配るもんではあるだろうけど、2か月前っていうのは、いくらなんでも早すぎない?

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